桜の咲くころ、思い出して

「やっば、川瀬ちゃん可愛すぎじゃん?」

か、かわいすぎ…

って何!?

…やっぱからかわれてるのかな?あせる私の姿を見て。


昨日のあれは何だったの?

って、聞きたい。


聞きたいけど、聞けない。


真っ赤になった顔は恥ずかしいし、顔は見られないし、余裕なんてないし…

ドッドッドッて心臓がうるさい。

ずっとふわふわして自分が自分じゃないみたい。


ねぇ伊田くん、昨日のあれは何だったの?


「俺、川瀬ちゃんのこと好き」


聞きたいって思ってたのに…

「え…?」

スッと立ち上がった伊田くんは真っ直ぐ私の方を見ていた。

あれだけ顔を見るのが恥ずかしかったのに、あまりに真剣な瞳で見るから私も逸らすことができなくて。

ドクン、ドクン、ドクン…とスローモーションになった感覚で心臓の音が聞こえてる。


え、今なんて?

私のことが好き?


伊田くんが私のこと…


私のっ


「あ、友也おはよ~!」

「おはよー」

まだ言おうともしてなかったけど。
口も開いてなかったし、息も吸ってなくて、全く準備ができてなかったんだけど伊田くんが話しかけられちゃったから…


話が終わっちゃった。


伊田くんが友達と歩いて行っちゃう、伊田くんが…

このまま行っちゃうの!?


まだ私何も…っ


「……。」

言えなかった。


…なんて返せばよかったのかな?


熱くなった頬を隠したくて両手で押さえる。

ドキドキ、ドキドキ、心臓がうるさいんだもん。
こんなに胸がきゅーってなってざわざわするのは…

「ヨシノ」

……。

「ヨシノ?」

また聞こえてないの?

「ヨシッ」

『聞こえてるから大声出すな、勘違いされるぞ』

「…だってっ」

私の声が届いてないのかと思った。

『奈絵が学校で話しかけるなって言ったんだからな』

「…。」

言った、けど…
なぜか今日は怖い。

ヨシノの声が聞こえないと怖くて、落ち着かない。

伊田くんのことでもヨシノのことでも落ち着かないよ。