桜の咲くころ、思い出して

廊下に出るなり名前を呼ばれたから、振り返るとパァっと目を大きくした森木先生と目が合った。

その表情にちょっとだけ顔が引きつっちゃった、嫌な予感して。

「悪いんだけどこれ職員室に持って行ってくれない?」

そうかなって思った、手に持ったノートの山を見て運んでくれる人を探してたんだろうなぁって。
タイミングよく?悪く?ちょうど私が教室から出て来たから呼ばれたんだよね。

「…はい、わかりました」

断る理由もなくてホームルームで集めたクラス40人分のノートを受け取った。

「よろしく頼むよ」

職員室かぁ…地味に遠いんだよねぇ。
ここ3階からはまず1階まで下りて下駄箱を通り過ぎてさらにずーっと廊下を歩いていかなくちゃなの。

それがちょっと大変で…

『どんまい』

「……。」

ぼそっと頭の中で聞こえた声にムッしながら歩き出した。

とりあえずは階段を下りよう、それで早く置いて早く帰ろう。
ドラマでもアニメでもオセロでも帰ったらしたいことあるしね。

40人分のノートを両手で抱え込んで階段を下りる、40冊のノートはすごい重いってわけでもないけどまぁまぁな量にはなって…

気を付けないと落としそうになる、かも。

だからノートを気にかけながら、足元を気にして一歩ずつ下りて…


「あっ」


トンッと一段階段を下りた時、背負っていたリュックの肩ひもがずるっとずり落ちた。

『奈絵!』

あ、リュックが…!


―ズサァァァ…ッ


「!」

『おいっ』