桜の咲くころ、思い出して

「それが…むずしくない?」

私にはマネできない。

「そ?自分のやりたいこと書くだけだよ?」

「そうだけど…」

やりたいことって言われても、どう書けばいいのかわからない。

というか中学生になったらやりたいことって、なんだろう?

「川瀬ちゃんって部活やってる?」

「えっと…やってない」

「俺もやってない~!やりたいのなくて」

ケロッとした顔で、ハハッと笑ってた。

そんなハッキリ言えちゃうんだ、やりたいのないって…

「体験入学はいろいろやってみたの!野球とかバスケとかバレーとか、でもどれもやりたい~って思ったのなくてさ」

「う、うん」

「で、誰も手を上げなかった室長になんとなくノリでなってみた!小学校に室長なんてなかったからどんなのかなぁ〜って気になって」

「…うん」

「そしたらまとめなきゃいけないしすることも多いしで、それがめーっちゃ楽しくて!」

…え?楽しいの、それって。

めーっちゃ大変って言うのかと思った。

「やってよかったって思ったんだよね」

右手でほおづえをつきながら顔を傾け私の方を見る。

「やってみたら楽しいことって結構あるんだよ」

伊田くんの瞳は透き通っててキレイだ、いつも。

「そしたらそれは1個レベルアップしたかなって思って、じゃあ次は何しようって思うじゃん?」

伊田くんは適当だ。

「だからもっといろんなことやりたいしこれはどうなんだ!?って思うのも何でもやりたい」

めちゃくちゃでびっくりすることも多いけど、しっかり自分を持ってる人だ。

本当は全然適当じゃないのかもしれない。

「って作文に書いた!」

「……。」

「あと遅刻もしませんって最後付け足しといた」

「…抜かりないね」

ちゃっかりはしてる…ね?

でも真っ直ぐだよ、その文章に感じるのは伊田くんの純な気持ちな気がして。

「川瀬ちゃんは?教えてよ」

“本当の名前は?教えてよ”