桜の咲くころ、思い出して

「じゃ、俺は職員室戻る!出来たら持って来るように!」

机の上に原稿用紙を置いてここで書いていくようにって言われた。

「あ、そうだ!作文のテーマだけど…」

空き教室から出て行こうとした森木先生が足を止めて振り返った。疲れた様子でグッタリしながらも私たちの方を見てもう一度目に力を入れる。

「“中学生になったら”」

中学生になったら?

「中学生になったらもう遅刻はしません!ぐらい書いてこいな!!?」

「「……。」」

これはよっぽど森木先生も怒られたのかな、学年主任の笹倉先生いつも落ち着いてて怖いもんね。声も低いし、目つきも怖いし、私も授業中寝ちゃって怒られた記憶が…

「ま、今のは冗談として」

「森木せんせー情緒不安定なの?」

「中学生になったらやりたいこと書いて来いよ」

人差し指をピシッと伸ばしてキリッと眉を正した。

「何でもいいから、やりたいこと書いてきたらいい」

そう言って教室から出て行った。
ふぅっと息を吐きながら、私と伊田くんを置いて。

中学生になったらやりたいこと…
って何かな?

私のやりたいこと…

「さくっと終わらせて帰るかー」

伊田くんが原稿用紙の前に座った。リュックから筆箱を出してシャーペンを探す、私もリュックを下して隣に座った。

私が筆箱を取り出してる間に伊田くんはスラスラとペンを走らせ、しゃべるだけじゃなくて作文も得意なんだと思った。

え、すごい早くない!?

まだ書くこと全然決まってないし、書き出しも迷ってるよ私…

「出来た!」

「早いっ」

やっと名前を書いたところで伊田くんの作文は完成してた。

「こーゆうのはインスピレーションだから!」

「インスピ…?インスピレーション??」

伊田くんは感覚で生きてる、そんな感じがする。
だから誰とでも話せるし、そのおかげで伊田くんが話すと空気が変わるのかなって。

「やりたいこと書けばいいだけじゃん?」

そしてその世界が、優しいの。