桜の咲くころ、思い出して

ぐいっと腕を引っ張られた、かけ下りて来た伊田くんに。

「具合悪い?先生呼んでくる?」

『奈絵大丈夫かっ』

「大丈夫…」

ちょっとびっくりしたけど、腕を引っ張ってもらったおかけで後ろに倒れないで済んだ。

だからなんともなくて伊田くんもヨシノも大丈夫だから…

「肩貸そうか?」

「え!?」

伊田くんが真剣な顔して言うから、瞳をぱちくりしてしまった。

腕をつかんだまま、まっすぐ私を見てるから。

「あ、でも俺だとまずいよな。誰か女子ー…」

「だっ、大丈夫!本当に大丈夫だからっ!」

キョロキョロと辺りを見回して探してくれてる。
でもできたらそれは…あんまり…誰にかに頼むとかしたくなて。

見られたくないっていうか、こんなとこ。

だから…っ

「大丈夫じゃなくない?」

変わらず伊田くんは私を見ていた、伊田くんの瞳に私が映ってる。

それがすごく恥ずかしくなった、そう言われて恥ずかしくなった。誰かに頼むなんて恥ずかしいって思ってたから。

あ、どうしようまた下を向いて…

「川瀬ちゃんってさ、しゃべるのが嫌いなわけじゃないよね?」

「え?」

「幽霊と話してるくらいだし」

「幽霊じゃっ」

『…。』

伊田くんが話すと空気が変わるって思ってた。

「だから人間とも話してみたらいいよ」