桜の咲くころ、思い出して

「あのね、伊田くん」

「それはやっぱ守護霊的なやつなの?」

「え!?」

「それともなんか契約してそばにいる霊とか!?うわっ、それカッコいいじゃん!強そうな奴がいいよな~!」

伊田くんの話がどんどん進んでいく、しかも早口でこれは本当に好きなんだろうなって感じさせる。

契約した霊とか知らないし、どこでそんなの出てくるの!?


でも、ヨシノは…っ


「川瀬ちゃんの話してる幽霊はっ」

「幽霊じゃないから!」

つい声が大きくなってしまった。
その瞬間、ぶわっと風が吹いて握りしめていたスカートが揺れた。

「あ…あのっ」

大きな声なんて出すことないから、しかも力のこもった声…自分でもビックリした。

「幽霊とか、私も見えなくて…っ!だから伊田くんの期待するようなあれじゃ…」

だけど、何も言えることもない。

誰かと話してるなんて言われるくらいなら独り言で済ませておく方がよかった、きっと。

幽霊のフリでもよかったのかもしれない。

その方がこれ以上何も言われなくて済んだかもしれないのに。

『……。』

言えなかったの。

ヨシノのこと、そんな風には言いたくなかった。

「じゃあ秘密の相手なんだ?」

「え?」

下を向きかけた、でも声色の変わった伊田くんが気になって顔を上げた。
さっきの早口から、今度は穏やかな声になっていたから。

「川瀬ちゃんの秘密なんでしょ?」

「私の秘密…?」

スッと立てた人差し指をくちびるにあて、静かに微笑む。

「今度教えてよ、川瀬ちゃんの秘密」

風で揺れる前髪が目にかかる、八重桜の花びらが舞って少しうっとおしい。

大好きな桜なのにこんなこと思うなんて。


私の秘密、なのかな?

だってヨシノはー…