桜の咲くころ、思い出して

「川瀬ちゃん家ってどっちー?」

「えっと、こっち…っ」

「おっ、一緒だ!誘っといて帰る方向逆だったらどーしようかと思った~!」

「…。」

一緒に歩き出した、伊田くんが歩く隣を…

それはものすごくこそばゆい。


誰かと一緒に帰るのってすっごくこそばゆい…!


顔が引きつっちゃうかも、変な顔してないかな!?

頭の中で思ってるだけじゃなくて、私にもこんなことあるんだって…


「川瀬ちゃんって写真に詳しいの?」

「え?」

「いや、さっき光の加減とかなんとか言ってたから」

「あ、あれは…」

ヨシノが言ってたことを言ってみただけ、写真を撮ることもあんまりないし。
言うことに困っちゃってつい、言ってみただけ。

「みんな驚いてたし、すげぇーって盛り上がっちゃってさ!」

「……。」

盛り上がってはいたなぁとは思う。
気付けばたくさん集まって来てみんなで集合写真みたいな写真を撮って…

「川瀬ちゃんすごいね!」

「すごいのは伊田くんだよ」

でもその中心にいたのは伊田くんだよ、伊田くんがいたからだよ。
だって伊田くんの声でみんなが集まって来たんだもん。

「何が?別に俺はすごくなんかないけど」

「すごいよ、誰とでも話せてすごいなぁって…」

「適当にしゃべってるだけだよ」

『それはそうだろうな』

…ヨシノ、黙ってて。また反応しちゃいそうになる。

そよそよ優しい春風が髪の毛を揺らす、隣を見上げるのは少し緊張してできなかった。

「伊田くん…、ありがとう」

また助けられちゃった、私が伊田くんにしたことなんて何もないのに。

「全ッ然!」

伊田くんが話すとやさしい空気が流れるの、まるでこの春風みたいに。ぽかぽかあたたかくて自然と顔がゆるんじゃうの。

「俺室長なの、だからクラスのみんなが仲良しだと嬉しいよね~!」

『マジすげぇ奴だな』

「……。」

本当にすごい人だ、私だったらたぶんそうは思えない。

仲良くなりたいって思いながらも仲良くしようとして来なかった。


私が伊田くんみたいになれたら…

変わるのかな、私でも変えられるのかな。