桜の咲くころ、思い出して

シャッター音のした方を向くと伊田くんがタブレットを構えていた。くすって少しだけ笑って、もう一度カシャッと写真を撮った。

「え、あの…っ」

今のはハッキリ見てた、伊田くんとは目が合ってたし伊田くんの持ってるタブレットのカメラがどこを向いてたのかも…!

「私のこと撮ってなかった!?」

「あ、バレた?」

「見えてたよ!見てた、今カメラ…っ」

「楽しそうに笑ってたから撮っちゃった♡」

どうしてそこで笑うのかな、私にはわからないよ。

なぜかわからないけど、頬が熱くなるんだもん。

「川瀬ちゃん1人~?先生、2人以上って言ってたよ~??」

「あ、それはっ」

こそっと1人で写真撮ってそろっと戻ればわからないと思ってた。
誰も私のことなんか気づかないだろうなって、ずるいこと考えてたのに…

「というか!さっき撮った写真消して…ください!」

「なんで?俺はこれを提出したい」

「そんなテキトーに撮ったやつダメです!」

「テキトーじゃないよ、偶然だよ…写真とはそうゆうものだからね」

「ど、どうゆうもの…??」

伊田くんとしゃべればしゃべるほど伊田くんのペースに飲まれてく、だから勘違いしちゃうの私もそっちの世界に行けたような気になるの。

手を伸ばしても背の高い伊田くんには追いつかないのに。

「伊田くん消してっ」

「じゃあ川瀬ちゃんが1人で撮ってたこと先生に言っちゃおうかな~」

「ゆすってる!?」

まごまごする私を見てくすくすと笑う、でもそれは感じたことのなかった空気感で。

いじわるをされてるのに嫌じゃないなんて不思議、そんなこと思うわけないのに…


どうしてかな?

伊田くんと目を合わせるたび心臓がキュッてなる。


わざと私にタブレットを取らせないような仕草に、触れそうになる手に、ドキドキと胸の奥が音を出して。