桜の咲くころ、思い出して

『オレが撮ってやろう!』

「え…」

『オレが写真、撮ってやるよ』

「何言って…」

私の頭の中だけで存在してる。

だから見えないし姿かたち…そんなものは誰も確認しようがなくて仕草や動作はヨシノの意志ではどうにもならない、行動を起こすことは絶対にできない。


ただここに存在()るだけだから。


「…撮れないでしょ、ヨシノは」

『撮れるよ』

「撮れないよ、どうやって写真に残すの?」

『オレの記憶には残る』

あぁ、やっぱり泣きたくなっちゃったかも。

でも泣くのはやめとく、だってここ学校だし。

「…やっぱさ、学校で誰ともしゃべらないのってさみしいね」

あんなこと言うんじゃなかったってすぐに後悔しちゃった。
私の意志は桃の花の香りより薄くて嫌になっちゃうね。

『わかった、じゃあ奈絵がいつもで笑えるように落語仕込んでおく!』

「なんで!?」

『授業中楽しみにしとけよ!』

「授業中はやめてよ!」

しかもなんで落語?私落語の趣味ないよ!

ないけど…っ

「…お昼休みに、お願いしようかな」

ヨシノが聞かせてくれるなら、それはきっと笑っちゃうと思うから。

好きじゃない学校でも、楽しい時間ができるかもしれないね。

そしたら毎日学校に行こうって思えるかも、だって今笑って…


―カシャッ


「え?」

どこからかシャッター音が聞こえた。

誰かが写真を撮ってる?私以外にもいたの?

桃の木を撮りに来た人が…


「伊田くん…」