桜の咲くころ、思い出して

とりあえずみんなが教室から出たから同じように廊下へ出た。

2人以上のグループってむずかしい、2人1組だった余った人とペアってこともできたけど何人でもいいって言われたら…
みんなは自由にグループができていくのに、誰にも誘われない私は余ったまま。

自分から言えたらいいけど言えるわけないもん、友達と話したことなんかないんだもん。

『……。』

みんなの後ろをひっそり歩きつつ、いいところでスーッと横にそれて廊下を曲がった。
学校中どこでもいいって言うから下駄箱でスニーカーにはき替えて外に出ようと思って。

今日は天気がいい、太陽が出て空も明るい。

だから昨日見た花の写真を撮りたくて。

「あ、ほんとだ近くで見ると違うかも!」

『……。』

昨日は遠かったから桜かと思ったけど、この距離だと花の咲き方が全然違うのがわかった。

色味も濃かったり薄かったり、1本の木でもこんなに差があるんだ~!これは桜じゃない、桃の花だ!

桃の木に近付いてちょこっと背伸びをする、目を閉じて鼻に神経を集中させるみたいに。

「…めーっちゃほんのり!」

なんとなーく感じるかなってぐらいでこっちから嗅ぎにいかないとわからないぐらい。ちょっと甘いかなーって、思わなくもないぐらいの。

「…教えてくれた通りだね」

『……。』

……。

これは本当に独り言、1人でしゃべってるんだもん独り言だよ。

さっきからわざとらしく話しても応えてくれない、私との約束を守ってくれてるの…


わかってるよ、わかってるんだけどね。


タブレットのカメラアプリを開いて、桃の木の写真を撮った。

2人以上のグループでっとは言ってたけど、撮るものは何も言われてないもんね。提出できる写真にはなるかなって。

ここは裏庭でもなければ中庭でもない、なんて言うのかな…職員室へ向かう廊下から見える庭。

…え、庭なのかな?
よくわからないけど、誰も来ない静かな場所なんだよね。


ぽつんと1本の桃の木だけが咲いていて。

まるで私みたいで。