桜の咲くころ、思い出して

「いつも楽しそうでいいよね」

「……。」

バカにされるかと思った。
きっと嫌になって伊田くんも私と話してくれなくなるって、そう思ったのに。

「学校好きなんだね~!」

……ん?

「えっ!?」

「え?」

つい目を大きくしたら伊田くんはさらに目を大きくした。

「そんなこと、思ったことない…」

ぱちくりする私に伊田くんがキョトンとした顔をする。

「え?そうなの?」

学校が好き…?

なんで私を見てそう思ったの?
なんでそんなことを言い出したのかちっとも…

「いつも笑ってるから学校好きなのかと思った」

……。

それは学校が楽しいから笑ってるわけじゃないんだけど。

でもね、いつもだったらそれが変だとかおかしいとか言われてた。


なのに伊田くんは違ったから。


「じゃあこれから好きになれるね」

にこっと微笑む伊田くんの髪がどこからか入り込んできた風でゆれる。

「可能性無限大~!」

楽しそうに笑ってた。

そんな伊田くんはきっと学校が好きなんだろうなって思った。


伊田くんは今まで出会ってきた人とは違う、ちょっと不思議な人。


伊田くんは私と違う、私の世界と違う…

どんな世界の人なんだろう?


「川瀬ちゃん、今度は一緒に帰ろうよ」


川瀬ちゃん、初めて呼ばれた時から心臓の音が聞こえてた。

あたりまえみたいに呼んだから、呼んでほしくないって思った名前をかき消すみたいに呼んだから…


うれしかったの。

本当は、ドキドキするくらいうれしかったの。