桜の咲くころ、思い出して

「あ~、川瀬ちゃんがインコちゃんだったのか!インコって名前、名簿にはなかったと思ったんだよな~!」

「名簿?」

「うん、うちのクラスの!」

あたかもあたりまえのように言うから。

「覚えてるの?その…っ、みんなの名前」

「うん、まぁ自分のクラスだし?名前くらい知っときたいじゃん?」

そんな普通ですって顔されたけど…

まだ入学して2週間だよ!?それが普通なの!?

『すげぇな~、人間の脳なのに』

伊田くんの名前だってヨシノに教えてもらったのに、伊田くんはクラス全員の名前を名簿を見て覚えてるんだ。

「すごいね」

「別にすごくなくない?インコちゃんこそすごいじゃん、入学したばっかなのにもうあだ名ついてるとか」

「あっ、それは…」

「?」

いい意味でじゃない、誰かと仲良くなってついたあだ名とかじゃないから…
しかも直接呼ばれたことなんかないし。

こそこそ呼ばれてるだけで私を呼ぶ名前じゃない、それはまるで私を指す暗号みたい。


『奈絵』


ヨシノに呼ばれてハッとした。どんどん顔が下を向いていくところだった。

「インコちゃん?」

「あっ!気づいたら呼ばれててね、その…勝手にいつの間にかっ、えっと…っ」

どう言ったらいいかわからなくて。
意味を知らない人に知られるのは恥ずかしい、自分から話すなんて…


どうしよう、また下を見たくなっちゃう…!