何やってもうまくいかない犬飼さん




なぜだろう。


仲良くしている永瀬さんを見ていると、胸が苦しくなった。


この鳥越とかいう男は、永瀬さんにとって大事な存在であるはずだ。


そう思えば思うほど、胸の奥でぐつぐつと何かが煮えたぎってきた。


不幸な自分を助けてくれたのが嬉しくって。


だから、ちょっと浮かれていたのかもしれない。






学校についてから、僕は身を縮める。学校で誰かと関わると、人に不幸をばら撒くことになるかもしれないので、じっとしておくのが一番。


恋する感覚を知らないから。


まだ、これが恋とかいう流行りのものかのかわからない。


でも、永瀬さんが僕のこと好きなら、僕はとっても嬉しい。


この想い、どうやって伝えよう。


まず、どっちなんだろう。


僕が永瀬さんのこと好きなのか、永瀬さんが僕のこと好きなのか。


もしくは、どっちもか。


まさか、僕と鳥越が席、隣同士になるなんて。


鳥越は自己紹介も理知的で、すぐに生徒たちの注目を集めていた。



「おい、犬飼。なんだこれは」

「……」



鳥越から渡された、僕の数学のプリント。採点されたそれの点数欄には、赤いペンで大きく『22』と書かれている。



「お前、週末何してる?」

「……、アニメ観たり、推しVの配信観たり」

「推しV?」



僕はスマホの検索画面で、YouTubeを表示する。



「これ。個人勢なんだけど……櫻井ヨウっていって……」



僕が言いかけた時、鳥越が不可解そうな顔をした。確かに彼はVTuberとかの部類に疎そうだ。



「そんなに好きななのか?それ」

「うん。好き。普段、無愛想なくせに、たまに見せる笑顔がチャーミングっていうか……」



鳥越が咳払いをする。その顔はなぜか少し熱っていた。



「……いいな、推しって」

「あ、でもアニメキャラに推しいるから、好き度はちょっと低いかも?」

「どうせなら推せ!!!」



大声で放つ鳥越。すると彼は僕の胸ぐらを掴んできた。



「それで何が『推しV』だ?ちゃんと推すなら推してください」

「……すみません」



鳥越はため息をつくと、僕を睨みあげた。



「今日、俺ん家に来い。美久乃と二人でな」

「え?」



なぜか顔を真っ赤にして、鳥越が僕を指差す。



「勉強……教えてやる」