何やってもうまくいかない犬飼さん





「……というわけで、結婚式当日にトラックに撥ねられ、式を3週間遅らせた男、犬飼幸です。これから何卒よろしくです……」



なぜか正座をした彼が、わたしに頭を下げる。


そうか、わたしはこれからこの人と、本物の愛を育んでいくのか。


同じアニメの同じキャラが好きで。


偶然助けたその相手。


その人に。今はこれほど愛されているなんて。


信じられない。


でも、こんなに幸せなんだ。


好きな人と、一緒にいられることって。


これからの人生、二人で乗り切らなきゃいけない。それはわかってる。


どこか不器用で、


どこか鈍臭くて、


どこか精一杯な、


そんな同居人さんは、


今日から旦那さんになりました。



「えっと、そっか、もう犬飼さんじゃないんだね。幸……くん?」



夫婦になっても相手をしたの名前で呼ぶのは照れ臭い。


それはきっと相手が好きな相手だからだろう。


わたしが彼をしたの名前で呼ぶと、彼は優しく朗らかな笑顔を浮かべた。



「僕もみっちゃんも、もう同じ犬飼なのか……不思議」

「みっちゃん!?」



みっちゃんって……わたしのこと!?



「もう普通の関係じゃないからさ」



彼はもう一度わたしの肩に優しく手を当てた。


そして、昨日のように、もう一度唇が触れ合う。


これは、何やってもうまくいかない犬飼さんの、


唯一うまくいった恋の話。


わたしはその世界の主人公でありたい。



「ようやく見つけた」



この愛を、絶対に離すものか。