何やってもうまくいかない犬飼さん





『うまくいくこともうまくいかないよ!!』



こう言ってもらえたのが嬉しくって。


今まで諦められてきた存在だから。


何やってもだめで【ダメ犬】呼ばわりで


好意を伝えるのが苦手で。


両親からも残念な子って言われてきた。


明日で工事も終わって、手続きが完了するらしい。


つまり、僕と永瀬さんが一緒にいられるのは、明日まで。


それからは、ただの知人。


言わなきゃいけない。


永瀬さんが嫌いです。


永瀬さんとは一緒にいられません。


言え。言わなきゃダメだ。


最後まで負け犬でいいのかよ。



『好きになった理由だよ』



僕は彼女のどこに惹かれたのだろう。


どこだろう。


それがわからないから、結果的に、彼女のことが嫌いなんじゃないかって思う。


だから嘘までついたのに。


どっちだ?


この感情、いったいどっち?



「永瀬さん……」

「どうしたの?」



言え。言うんだ。


これで終わりにしよう。


彼女と一緒にいると、気が狂いそうになる。


これが、僕の初めてでいいのかな?


僕は軽く深呼吸をした。



「貴方はいつでも、僕に優しくしてくれました。ずっと弱くてダメなやつって言われた僕に……そんな貴方に……そんな貴方の……」



違うって。


そうじゃないだろ。


そっちじゃない。




「か弱い心でも、力強いブレない軸に惹かれました。きっとこれは貴方にしかないものです」



僕みたいな弱っちい奴に、


永瀬さんみたいな素敵な人は……。


真っ直ぐに、永瀬さんの目を見る。



『うまくいくこともいかないよ!!』



言ってみないと、わかんない。



だって永瀬さんは、僕の知らないことを、たくさん教えてくれたから。











「好きです。結婚してください」










どうしよう、言っちゃった。僕は口元を押さえる。




「すみません、まだ恋人でもないくせに、結婚なんて……キモすぎますよね……」

「犬飼さん」



彼女の目は透き通っていて、まるで太陽のようだった。



「待ってた。その言葉」




そして、満面の笑みを僕に贈る。



「大好き。犬飼さん」



微笑む彼女は、ドアの方に振り返る。僕は彼女に後ろから抱きついた。



「待って。いかないでください」




ぷっと笑いが溢れる。



「【ダメ犬】の僕でも、必死で貴方を幸せにしますから」