何やってもうまくいかない犬飼さん




2週間後の月曜日。


ここ最近は平和だった。


犬飼さんの怪我も減ってきたし、少しはよわよわ卒業できそうかな?



「えー幸は昼休みに野球部のボールが頭に当たって救急車で搬送されました」

「は?」



ちょっと待て。ちょいと待っとくれ。


わしらの平和はどこいったんじゃ。



「すまん、犬飼」



お前かよ鳥越!!!って、鳥越くん野球部だったんだ。


確かに野球好きだったな、鳥越くん。


昔はよく贔屓のチームのこと教えてくれてたっけ?


なんだか懐かしいな。


日本一の野球選手が将来の夢とかも言ってたし、実は結構スポーツ好きだったんだよね。


ま、結果VTuberになったけど。





放課後、なんやなんやで入院が決まった犬飼さんの元へわたしは向かった。


傷は案外重症だったものの、幸い急所は外れていたらしい。意識もあるので、あと数日で退院できるという。


なんだろう。やはり放っておけなくて、見舞いにきてしまった。しかも見舞いの品まで買って。見舞いの品は、彼の大好物であるマシュマロだ。


所詮は他人なのに。


でも、彼がいてくれたことで。毎日が楽しかった。


そろそろ大工事も終わるだろう。


「どうぞ」


扉をノックすると、彼とは思えないほど抑揚のない声が帰ってきた。



「なんだ、永瀬さんか」



病衣服の犬飼さんは案外様になっていた。悔しいけど似合っている。



「もしかしたら制服より似合っているんじゃない?」

「そうですか……」



なぜか妙に緊張している彼。どうしたのだろう。


らしくないのでこっちが心配になる。



「あの……永瀬さん」



犬飼さんがこちらを見る。わたしはすぐに見舞いの品を突きつけた。



「気になりますよね、これ、あの映画館のマシュマロとおんなじやつです!どうぞ!ではご安静に、さようなら!!」



そう言いながらダッシュで病室を出たわたし。なぜなら病院の無機質な感じの匂いに耐えられないからだ。



「……むぅ」



何か言おうとして逃げられた犬飼さんは、不服そうにドアを見つめた。