何やってもうまくいかない犬飼さん




「起きて……鳥越」



遠くで声がきこえる。俺は急いで目を開いた。



「あ、起きた。早く計画書書こうよ」

「ちょっと待て自己中野郎」



俺は咳き込む。


すると犬飼が俺の頭を撫でてきた。



「な、なんだよ」

「計画書」



こいつまじヤベェわ。






「……で、計画書って具体的にはどんなの?」


と俺が聞くと、彼は「どうしよっかな」とペンを手に取る。



「ちゃんとした告白の仕方、わかんないんだよね」

「告白って……やっぱ理由が大事なんじゃね?」

「理由?」



犬飼は首を傾げる。


俺はため息をつきながら、これから計画書になる予定の白紙に鉛筆を踊らせた。



「ああ。好きになった理由だよ。相手のどこに惹かれたのか、想いを伝えてどうしたいのか、未来が見える人と一緒にいたいだろ?人間って」

「あーなるほど」

「あとはなぁ……話し方だな」



俺は犬飼に向けて指をさす。



「その喋り方だ。敬語はやめとけ。お前が言うと狂気感じるんだわ」



俺が指摘すると、犬飼はひゅーんと後ろに倒れていった。



「き、嫌われまいと敬語を使っていたのですが……」

「別に嫌われるこたねぇよ」



それっぽい理由を白紙に綴りながら、俺とこいつとの距離は縮まっていった。



「おーい男の子たちー勉強お疲れさーん」



俺の体がガチガチに固まる。お盆に乗ったミルクコーヒーを俺は疎ましそうに見つめた。



「姉ちゃん……なんで来たの」

「え〜だって公貴のダチ見たいじゃん」

「ダチとかいうのやめろって」



部屋に入ってきたのは姉の莉子だった。学校ではおっとりしたお淑やかなお嬢様を演じているらしいが、家の中ではお淑やかさのかけらもない。



「人気VTuber櫻井ヨウの友人様でしょ?……って何このイケメン!!犬みたい!!」

「どうも、鳥越くんの知人の犬飼です。ハムスター派です」

「何それ可愛い〜」



頬をむにむにされて「あばばばば」と慌てる友人を横目に、俺は感情を無にしていた。