「大丈夫かな……犬飼さん」
あれだけ不運なのだ。死んでしまってはいないか心配でたまらない。
彼は傷だらけでフラフラしていたので、早退させられた。わたしが申巻くんのところへ行っていた間に帰ったらしい。
「ただいまー」
「お帰りなさい」
あ、よかった平常運転だ。
わたしは制服のブレザーを脱ぎながら彼を見る。なぜか女々しくもじもじしている彼に違和感を抱いた。
「すみませんでした……今日は立派な成績が収められなくて……」
「いや全然!そんなことないよ!犬飼さん頑張ってたし、かっこよかった」
わたしが笑顔で言うと、彼は嬉しそうに微笑んだ。至って純情な男である。
「……そうだ、これこれ」
と言いながら犬飼さんは自室へ向かっていった。そして走って戻ってくる。
何か紙切れを手に持って。
「…………気晴らしに、映画でも観ませんか?」
「え、映画……?」
わたしはその紙切れを受け取る。それは映画のチケットだった。二人分用意してくれていたらしい。
「明日は休日ですし……日々の疲れを吹き飛ばすホラーなどいかがでしょう?」
「ホラー!?」
わたしは断ろうとした。なぜならわたしはホラーが大の苦手だからだ。
近くに映画館はあるけれど、映画を観に行くことはあまりなかったし、怖いものは苦手だ。
しかし、あんなに真っ直ぐな視線でこれを渡されたら断れない。
「人気俳優の山口景勝さんが主演の『アナタのIは事故物件』シリーズの二作目です。評判がいいらしいので……」
こりゃまたびっくりするほど知らん話だ。でも事故物件とかそういうのにはロマンを感じてしまう性格なので、少し気になるかも……。
「そうだね、せっかくだし行こうか」
「やった!」
初めての休日が、ホラー映画で始まるなんて。

