何やってもうまくいかない犬飼さん




一時間ほどのゲーム配信が終わり、鳥越くんがこちらを見た。



「美久乃、黙っててごめん」



なぜか涙目の鳥越くんは、優しくわたしに抱きついた。柔らかい肌と指が触れ合う。



「俺、弱くて何もできない奴だったから。そのことを何にも知らない人たちと繋がりたかったんだ。強気なキャラやってたら、それが現実にもなって。……美久乃はヨウのこと知ってた?」



わたしは黙り込んでしまう。ここで正直に「知らない」というのは本当の優しさだろうか。



「すみません……」



わたしって弱いな。「知らない」って言うのは避けて、「すみません」だなんて。



「そうか……」



そう小さく呟いた鳥越くんは、わたしの耳元で静かに告げる。



「なら、俺を知らしめてやる。俺、もうあの頃とは違うから」



——そして、美久乃は俺に青春を教えて欲しい。



そうだ。そうなんだ。鳥越くんは、わたしを心配させないようにしてくれていたんだ。きっと、誰よりもわたしを知ってくれていた人だから。お母さんにいえないことも、お父さんに隠したいことも、全部彼には言えてきたから。


それなのに、わたしは鳥越くんのこと何にも知らなかった。



「……ごめんなさい!!」

「美久乃!?」「永瀬さん?」



わたしは堪えきれなくなって、部屋から抜け出す。急いで靴を履いて外に出た。


なんだろう。このモヤモヤした気持ち。



——美久乃!?
——永瀬さん?



わたしに対して言う二人の姿が脳内で重なる。


なぜか溢れ出てくる涙と戦いながら、わたしは走った。



(昇太朗はこんなことで泣かないもんっ……)



きっと、犬飼さんも、鳥越くんも。


やっぱり、わたしは弱いなぁ。