「大丈夫かな」
部屋の外でわたしは呟いた。また何か不幸なことが起こっていないといいのだけど……。
「おっっっっし!!!!」
ふすまの向こうから聞こえてきた声。わたしは驚いてふすまを開けてしまった。
すると嬉しそうにハイタッチする犬飼さんと鳥越くんの姿が目に飛び込んできた。
「やっと80点行ったな。偉いぞ」
「もっと褒めて」
「偉い偉い(棒)」
わたしは目をパチクリさせる。えっと、どういう状況ですか?
「どうせならご褒美欲しい!!」
「ご、ご褒美……?」
尻尾を振って喜ぶ犬みたいに、犬飼さんは鳥越くんに攻め寄った。鳥越くんが戸惑ったような表情を浮かべる。
鳥越くんはため息をつくと、ゲーミングデスクに向かって歩き出した。
ヘッドホンをつけながら、彼はパソコンをいじる。
「んんっ」
時計は午後六時を指している。
突然犬飼さんのスマホがバイブしたので、彼は急いでスマホを手に取る。
「あ……櫻井ヨウの配信通知」
「櫻井ヨウ?」
「VTuberです。僕の二番目の推しって感じ?」
「へぇ……」
「これ、観てみて」
わたしはVTuberの類にはめっぽう弱いので、軽く聞き流していた。
犬飼さんのスマホを二人で覗く。
「みんなー観てるかな?」
『みんなー観てるかな?』
え?
「え……えええええええ!?」
犬飼さんが顔を真っ赤にして口を押さえる。するとパソコンと向かい合った鳥越くんが振り返り、「静かに」と言ってくる。
「ごめんね、転校もあってしばらく配信できなかった」
『ごめんね、転校もあってしばらく配信できなかった』
鳥越くんの声と重なる櫻井ヨウの声。
ついさっき知ったVTuberの中の人は——
まさかの、幼馴染でした。

