Catastroph

(チセに泣いてほしくない)

唇を噛み締めるチセを、カントはただ見つめていた。



それから数日、カントとチセはこっそり会って会話を楽しむのが当たり前になっていた。

チセはカントの知らないことをたくさん教えてくれた。そのおかげで、カントは感情の名前や植物の名前などを知った。そしてーーー。

(チセと話している間は、心が安らぐ)

地獄のようなこの場所で、チセと話す時だけがカントの心の支えになっていた。そして、話す時間が増えるごとにカントはこう思うようになっていた。

(チセともっと一緒にいたい。ずっと一緒に……)

しかし、その願いは叶わない。チセと過ごす時間はいつも限られている。

「春にはマカヨが雪の下から顔を出すの。それを私たちは皮を剥いて食べたり、焼いたり、汁物の具にしたりするんだ」

チセは楽しそうに話す。カントはそれをジッと聞いていた。

「……僕も見たいなぁ。マカヨ。どんな味がするのかも知りたい」

「一緒に行こう」