魔法のメイク道具たちは恋を叶えますか?

——どうせ、私なんて。

鏡の前で私は小さくため息をついた。

子供のころから大切にしている手鏡に映るのは、何も手入れをしていない肌。

結んだだけの黒髪。何も変わらない、いつもの私。


「神崎くん、やっぱりあの子が好きなんだ……」


クラスの人気者の神崎透くん。

みんなに優しくて、いつも笑っている人。

クラスの端で1人、本を読んでいる私にも笑顔で接してくれる。

不覚にも、その笑顔に私は恋に落ちてしまったんだ。

そんな人を恋もしたことがない私が好きになるなんて、最初から間違いだった。



——今日の昼休み。


「ねえねえ、神崎くんって好きな子いるの?」


クラスの女の子グループの1人が急に恋バナを神崎くんに振った。

先ほどまで騒がしかった教室が嘘のように静まり返る。 

 
「……いるよ」


少し顔を赤らめた神崎くんがつぶやいた。

いきなり黄色い歓声、悲鳴にも聞こえる声が教室を包んだ。

誰なの!?

クラスの子!?など質問が飛び交っていた。


「うーん……優しくて、可愛くて、‟日向”のように笑う子かな?」


日向。

そう聞こえて少し身体が震えた気がする。

私の名前は、白石ひなた。

でも神崎くんとは目を合わせるのが精一杯で笑いあって話したことなんてない。

だとしたら、やっぱり神崎くんの好きな人は……雨宮あかりちゃん。

クラスで1番可愛くて、誰にでも優しい。女の子からも人気だ。

クラスの女の子も、あかりちゃんじゃない!?と盛り上がっている。

これ以上聞いていられなくて私は教室を飛び出した。



家に帰ってから一通り泣いた後、鏡に向かって腫れた目を確認する。


「……私なんて、可愛くない」


ぽつり、鏡に向かってつぶやいたその時。


——ひびが、入った。


「……え?」


鏡が光を放ち始める。


「その顔で‟私なんて”は、もったいないね」


少し低いけど、透き通る綺麗な声。

光が強くなり、思わず目をつぶる。

やっと光が収まったと思い目を開けたら、そこには銀髪の男の子がいた。

私と同い年ぐらいの背丈、絵本にでも出てきそうな王子様の姿。

サラサラの髪にはちょこんと乗った可愛らしい王冠。


「は、はあああ!?」

「驚くよね。でも、君のことはずっと見ていたんだよ」


男の子は優雅に笑った。


「僕はルクス。鏡の国の王子」

「……夢?」

「ううん。現実」


そう言って、彼は小さなポーチを差し出した。


「これは‟魔法のメイクポーチ”。ずっと僕を大切にしてくれたお礼に、僕の力を貸してあげる」


縁に沿って控えめについたフリルが可愛い。

それを手に取った瞬間、ピンク色のポーチが淡く光り始める。

私は光に導かれるようにファスナーに手を伸ばし、引いた。


その瞬間、ポーチが強く光りだし……


「やっほー!」

「……レオ、うるさい」

「大丈夫!怖くないよ?」

「君たち、一旦落ち着いて」


メイク道具が入っていると思ったポーチから、次々に男の子が飛び出してきた。


「……え、メイク道具、じゃない?」

「そうだよ。この子たちはメイク道具男子。

君が、自分に自信を持つための手助けになるだろう」


ルクスの言葉を受け、メイク道具男子たちに目を向ける。

赤い髪と笑顔が特徴の男の子、鋭い目つきが少し怖い男の子、ピンク色の髪に女の子みたいな可愛らしい顔の男の子、この中じゃ1番身長が高くて柔らかい印象の男の子。

——私の初恋は、メイク道具男子に託されました!?