「ほんっと、とんだ勘違いだったわー。疲れた疲れた」
とか言いながらも安心した顔で屋敷の敷地内へと足を踏み入れた楓くん。
つづくように望はイヤホンを耳にはめて、外の世界を遮断(とくにわたしの煽りを)。
そんななか、わたしの荷物をサラッと持ってくれた日向 識をふと呼び止めてしまった。
「さ、さっきの言葉って……、アニキがいつも思ってくれてた気持ちだったり、する…?」
それともあの場だけ取り繕った言葉…?
わたしが必要って、お母さんの目をまっすぐ見てあなたは言ってくれたの。
「おまえをあの家に戻したくなかったのは事実だ」
「え…、そっ、それってどういう…?」
「……さあな」
「ちょっ、えーー!!いちばん大事なところなのに…!!」
「つーか、一時帰宅ならあんな紛らわしい言い方すんな馬鹿」
「なっ、馬鹿はひどい!」
そんな顔で「馬鹿」なんて笑っちゃうね。
微塵も思ってない楽しそうな顔、してた。
できることならわたし、ずっと見ていたいな……。
この距離感で、もうちょっと近づいていいならそうして。
横じゃなくて正面から……とか。



