日向家の諸事情ですが。





「……ごめん、変なこと聞いちゃったね。おやすみ〜」



──────ガチャ。

ギィィィィィ。


今日も進展ナシかと立ち上がろうとしたところで、重い重い開かずの間が、開いた。



「………だれ?」


「……ええ…、いちばん最初に自己紹介はしたつもり…なんだけどなあ」



ごめん……ちょっともう眠くて。

せっかく出てきてくれたのにタイミングが意地悪すぎる…。


目元までかかった黒髪。
ストレートな髪質は、ただただ柔らかそうだ。


隙間から覗いた形のいい瞳は、わたしにはどこか揺れているようにも見えた。



「はじめまして…望」


「…呼び捨てしないで」


「いいじゃーん……だってわたしのほうが年上なんだよ?」



迷っている目だ。
信じられる人間か、裏切る人間かを。

自分にとって敵か、そうじゃないかを。



「だいじょーぶ。そんなに嫌ならやめるから」



ふわりと、微笑んであげた。



「………ボクの母さんは……あの男のせいで死んだ」