日向家の諸事情ですが。





スッと目の前に立たれると、意識していないのに冷や汗が垂れた。


まるで期待や希望を見ないようにと光を自ら消したような、なんて凍りきった目をしているの。

見惚れるほどの端正さを瞬時に打ち消してくる非動さが、ここでハッキリと見えた。



「お、一昨日の傷はもう…」


「聞こえなかった?この場所から消えろって言ってんだよ」



一昨日の傷はもう、治ったんですね。

さえ、言わせてくれない冷たさが一直線に向かってきた。


そりゃメイドさん3日持たず辞めるよ…。

この圧迫感に耐えられたらもう、そんなの人間じゃないもん。



「っ、い、いえっ…!!」


「…は?」


「いま帰ったらっ…おうちっ、ないから!!」



あなたにも事情があるのかもしれないけれど、わたしにだってあるんだから。

メイドにはメイドの事情ってやつが。


ここだけは逃げるなサナ…!!
こいつの根性を叩き直すって決めたでしょ…!


そう自分に言い聞かせて、15センチ近く差があるバカ次男へと。



「こっちだって帰りたくとも帰れないの…!!人様の家には人様の家の事情ってもんがあるの!!諸事情だよ諸事情っ、漢字書ける!?〜〜っ、このっ、この……バカちん!!!」



ふんっっ!!


メイドらしからぬ態度と言葉を放って、わたしは屋敷内に逃げ戻った。

そして安全圏へと入ってからの……。