シトラスの魔法が解けるまで

​「……藤井、見すぎ」
不意に真柴くんが振り返り、私と目が合った。
彼はすべてを見透かしたような顔で、ニヤニヤと笑っている。
「……っ! 前向いて!」
私は顔を真っ赤にして、必死にジェスチャーで彼を追い返した。
真柴くんがようやく前を向いてくれてホッとしたけれど、窓に映る自分の顔は、シトラスの香りが蒸発しそうなくらい上気していた。