シトラスの魔法が解けるまで

知覧特攻平和会館。
展示室に並ぶ遺書や遺影を一つひとつ目に焼き付けた後、私は外の公園で冴と二人、ゆっくりと歩いていた。
さっきまで見ていた、自分たちと変わらない年齢の人たちが残した言葉の重みに、さっきまであんなに苦しかった「結愛ちゃんへのイライラ」が、少しだけ遠のいていく。
​「……莉奈、朝、北口になんか言われたんでしょ」
冴が私の顔を覗き込んできた。やっぱり、冴には隠せない。
​「……目障りだって。瀬戸が避けてるのは意識してるからで、私が割り込むのは迷惑だって言われちゃった」