シトラスの魔法が解けるまで

​「おはよ、藤井さん」
洗面台で顔を洗っていると、隣に結愛ちゃんがやってきた。
彼女は手慣れた手つきでヘアアイロンを温め、鏡の中の自分をチェックしている。
「……おはよう、北口さん」
「藤井さんさ、昨日瀬戸のことずっと見てたでしょ。……正直、ちょっと目障りかな」
​突然の直球に、心臓が跳ねた。
彼女は私の方を見ようともせず、前髪の角度を整えながら続けた。
「瀬戸、今は私のこと避けてるけど、それは意識してるからだし。藤井さんみたいな『昔馴染み』が今さら割り込んでくるの、迷惑だと思うよ」