シトラスの魔法が解けるまで

​鹿児島に到着し、私たちはそのままフェリーに乗って桜島へと向かった。
デッキに出ると、目の前には雄大な桜島が、白い煙を上げてそびえ立っている。
潮風が私の髪を乱し、シトラスの香りを遠くへと連れ去っていく。
​「藤井、見てよ! 桜島、マジでデカくない?」
真柴くんがデジカメを構えながら隣に並ぶ。
「……うん。すごいね」
「あ、瀬戸もあっちで写真撮ってるぜ」
​真柴くんが指差した先、フェリーの手すりに寄りかかって海を見つめる彼の姿があった。
逆光の中で、彼の横顔は驚くほど綺麗で。
もっと近くで見ようと一歩踏み出した瞬間、私の視界を「ふわふわした髪」が遮った。