シトラスの魔法が解けるまで

「……っ、あれは、ただ当たりそうだったから……」
必死に言い訳をするけれど、顔の火照りが収まらない。
教室の隅では、結愛ちゃんが友達と一緒にこちらを鋭い目で見ているのがわかった。
​「……あんなの、ただの偶然でしょ。瀬戸、誰にでも優しいし」
結愛ちゃんのトゲのある声が聞こえてきて、教室が一瞬しん、となる。
でも、真柴くんがすかさずそれを打ち消した。
「いやいや、あいつが『誰にでも優しい』なんて初耳なんだけど。俺が当たりそうになっても絶対無視するぜ、あいつ」
​クラス中に笑いが起きる。
私は恥ずかしさで机に突っ伏した。
鼻をくすぐるシトラスの香りが、みんなの注目を浴びて、いつもよりずっと濃く感じられた。