シトラスの魔法が解けるまで

​「……瀬戸」
「……当たりそうだったから、取っただけ。勘違いすんな」
​彼はそう言うと、持っていたボールを乱暴に私に押し付けた。
指先が一瞬触れる。昨日まで遠くに感じていたシトラスの香りが、一気に熱を持って鼻腔を抜けた。
3組の陣地からは結愛ちゃんの「え、なんで……」という絶望的な声が聞こえ、4組の冴はガッツポーズをしている。
​「……あ、ありがと」
「……おう」