シトラスの魔法が解けるまで

3月、修了式。
今日で「5組の藤井莉奈」と「2組の瀬戸くん」の境界線が一度消える。
通知表を受け取り、机の中を空っぽにしながら、私は窓の外を眺めていた。
​(……来年こそは、同じクラスになりたい。同じ空気を吸って、毎日「おはよう」って言いたい)
​あの日、図書室で「ま、まあ」と言われてから、距離は少しだけ縮まったけれど、劇的な変化はなかった。
バレンタインも渡せなかったし。結愛ちゃんは渡したみたいだけど。
廊下ですれ違う時に、ほんの一瞬だけ目が合う。
それだけで一日中幸せでいられたけれど、北口結愛ちゃんの「毎日DM」という圧倒的な攻撃力の前では、私のシトラスの香りはまだ弱々しい気がしていた。