シトラスの魔法が解けるまで

​いつもの窓際の席に座って、入り口のドアを見つめる。
バッグの中からシトラスのヘアオイルを取り出し、ほんの一滴だけ手首に馴染ませた。
下駄箱で彼の熱を感じた指先が、また少しずつ熱くなっていく。
​ガラッ……。
​廊下で、誰かの足音がした。
一年前から止まっていた時計の針が、今、最後の一秒を刻もうとしている。
私は二枚の絵馬に誓うように、深く、深く呼吸をした。