シトラスの魔法が解けるまで

​「まあ、莉奈も莉奈で、昨日水色の絵馬とか書いちゃってさ。相当重症だよ」
「水色? ああ、あいつのラケットのカラーか。……ふーん。意外と莉奈ちゃん、攻めるねぇ」
​真柴くんが少しだけ感心したように、2組の方を振り返る。
「ねぇ冴、あんたさ、ちょっと協力してよ。俺もあいつの煮え切らない感じ、見ててイライラするし」
「いいよ。莉奈を泣かせた貸しがあるからね。……その代わり、あんたもちゃんと瀬戸を引っ張り出しなさいよ?」
​二人の会話は、いつの間にか「作戦会議」に変わっていた。
私は壁に背中を預けて、大きく深呼吸をする。
鼻をくすぐるシトラスの香りが、昨日の涙の味とは違う、少しだけピリッとした期待の味に変わっていく。
​(……冴、真柴くん、ありがとう)
​PV156の数字と、私を支えてくれる仲間たち。
もう、一人で悩む必要なんてないのかもしれない。