シトラスの魔法が解けるまで

「――でさ、あいつマジで分かりやすいんだよ。昨日だって、藤井に会うまで『めんどくせー』とか言ってたのに、結局図書室行ってんの」
「あはは! 瀬戸、ヘタレすぎじゃない? 莉奈、あいつが逃げたせいで昨日ずっと凹んでたんだからね」
​冴の言葉に、真柴くんが声を低くして笑う。
「いや、あれは拒絶とかじゃなくて、単にキャパオーバーだったんだって。藤井があんまり真剣な顔して待ってるから、どうしていいか分かんなくなって逃げ出したんだよ。あいつ、いまだに莉奈ちゃんのこと意識しすぎなんだわ」
​意識……しすぎ?
胸の奥で、トクン、と大きな音がした。
「めんどくさい」はただの照れ隠しで、逃げたのは「嫌い」だからじゃなくて「余裕がなかった」から……?