「……あーあ、行っちゃった」
呆然と立ち尽くす私に、本を押し付けられた彼の友達――真柴くんが苦笑いしながら話しかけてきた。
瀬戸くんの隣でいつも笑っている、明るいグループの一人。
「……ごめんね、真柴くん。邪魔しちゃって」
「ううん。あいつさ、ああ見えて結構パニくってたよ。藤井の顔見た瞬間、借りてた本のことすら忘れてたし」
真柴くんは預かった本を図書委員のカウンターに置くと、私の方を振り返って、少しだけ真面目な顔をした。
「……頑張れ、藤井。あいつもあいつなりに、なんか考えてるっぽいから」
「頑張れ」
その意外な言葉に、鼻の奥がツンとした。
彼は逃げた。私は拒絶されたのかもしれない。
でも、第三者の真柴くんから見たら、今の彼と私の関係は、まだ「終わり」ではないのかもしれない。
『逃げ出した彼の背中と、不器用な応援。
苦いシトラスの香りが残る図書室で、私はもう一度、止まった時計の針を動かすための勇気をかき集めた。』
呆然と立ち尽くす私に、本を押し付けられた彼の友達――真柴くんが苦笑いしながら話しかけてきた。
瀬戸くんの隣でいつも笑っている、明るいグループの一人。
「……ごめんね、真柴くん。邪魔しちゃって」
「ううん。あいつさ、ああ見えて結構パニくってたよ。藤井の顔見た瞬間、借りてた本のことすら忘れてたし」
真柴くんは預かった本を図書委員のカウンターに置くと、私の方を振り返って、少しだけ真面目な顔をした。
「……頑張れ、藤井。あいつもあいつなりに、なんか考えてるっぽいから」
「頑張れ」
その意外な言葉に、鼻の奥がツンとした。
彼は逃げた。私は拒絶されたのかもしれない。
でも、第三者の真柴くんから見たら、今の彼と私の関係は、まだ「終わり」ではないのかもしれない。
『逃げ出した彼の背中と、不器用な応援。
苦いシトラスの香りが残る図書室で、私はもう一度、止まった時計の針を動かすための勇気をかき集めた。』

