シトラスの魔法が解けるまで

「ねー、2組学級閉鎖だって。5組も休みになればいいのにー」
​クラスメイトの呑気な声が、胸に突き刺さる。
……嘘でしょ。
2組が休みってことは、彼は今日、学校に来ない。
私が勇気を出してくぐった校門の先に、彼はいないんだ。
​「そ、そうだね……」
​なんとか返事をして、自分の教室——5組の席に座る。
窓の外から差し込む光はこんなに明るいのに、私の心は隣の空っぽの教室みたいに、すんと冷え切っていた。
​(私だけ、学校……。彼は今、家で何してるんだろう)
​せっかくつけたヘアオイルの香りも、彼に届かなければただの自己満足だ。
会えない2日間。壁一枚隔てた隣のクラスに、彼がいない。
その事実だけで、こんなにも学校が広くて、退屈な場所に思えるなんて。
​『神様の意地悪は、いつも想像の斜め上をいく。一歩踏み出そうとした瞬間に、道そのものが消えてしまうなんて』