シトラスの魔法が解けるまで

​そこまで打って、昼休みの光景がフラッシュバックした。
瀬戸の隣で笑っていた、あの女の子。
わたあめみたいにふわふわした髪、自分にはない可愛らしさ、そして……彼との自然な距離感。
まるでわたあめのよう。
​あの子は、あんなに近くにいる。
あの子に向ける笑顔を、私はもう一年も見ていない。
私が「嫌われないように」と臆病に距離を置いていた空白の時間に、彼女は当たり前のように彼の隣に座るようになったんだ。
​「……バカみたい」
​私の想いは、こんなに重くて、痛くて、叫び出したいほどなのに。
彼に届くのは、気まずい沈黙だけ。
​『魔法が解けた後の世界は、思っていたよりもずっと、冷たくて切ないシトラスの香りがした。私は今日も、届かない言葉を書き連ねる。君の視界の端にも、私は映っていないと知りながら』