シトラスの魔法が解けるまで

​「……なんて送ればいいの」
『お疲れ様』? 『お土産どう』?
いや、お土産なんて渡せていない。
​(……あ。黒猫)
​駅で買った、あの火山灰の黒猫の置物を思い出した。
彼に似ていると思った、あの小さな黒い塊。
結局、追加する勇気も、送る言葉も見つからないまま、代休の太陽はゆっくりと沈んでいく。
​PVは500の大台に乗った。
読者のみんな、私は今、人生で一番高い壁の前に立っているよ。
指先ひとつで繋がれるはずなのに、その数センチが、鹿児島までの距離よりも遠く感じられた。
​『友達がくれた、小さな魔法。
追加ボタンは、私と彼を繋ぐ最後の架け橋か、それとも拒絶への入り口か。
夕暮れに染まる部屋で、私はただ、暗闇の中に浮かび上がる「瀬戸」という二文字を、壊れ物を扱うように見つめ続けていた。』