シトラスの魔法が解けるまで

​「あと20分! みんなホームに集合だよ!」
先生の声が響く。
エスカレーターを上がり、新幹線のホームへ。
冷たい風が吹き抜ける中、遠くの方に4組の列が見えた。
あそこに、彼がいる。
​(……言いたい。一言だけでいいから)

​一ヶ月後の「終わり」を知っている今の私にはわかる。
この時、あのホームで彼に声をかけようとした勇気が、どれだけ尊いものだったか。

私は真柴くんに「ちょっとだけ!」と言い残し、4組の列へと走り出した。
​『新幹線がホームに滑り込んでくる。
物語の終わりなんて、まだ誰も知らない。
私はただ、シトラスの香りを全身に纏って、最後の15センチを埋めるために駆け抜けた。』