シトラスの魔法が解けるまで

​科学館を出ると、午後の日差しが少しだけ柔らかくなっていた。
プラネタリウムの暗闇で感じたあの気配は、私の勘違いだったのかもしれない。
でも、手首に残るシトラスの香りは、まだ私に「信じて」と言っているようで。
​「……莉奈、次は駅でお土産だね。何買うか決めた?」
里紗が腕を組んで聞いてくる。
「……かるかん! あと、自分に何か思い出になるもの」
「私は絶対、瀬戸にお揃いのストラップ買うんだから!」
結愛ちゃんが横で息巻いているけれど、今の私には、不思議と焦りはなかった。
自分の心の中に、誰にも染められない「藍色」の決意が生まれていたから。