シトラスの魔法が解けるまで

​「みんな、プラネタリウム始まるって!」
里紗の声に誘われて、私たちは暗いドームの中へ。
リクライニングシートに深く腰掛けると、天井いっぱいに鹿児島の星空が広がった。
​暗闇の中、隣の席からは結愛ちゃんの甘い香水の匂いが漂ってくる。
でも、不思議と嫌な感じはしなかった。
暗闇の中では、みんな平等に星を見上げるだけの存在。
(瀬戸くんも、今頃どこかでこの空を見ているのかな……)
​ふと、右側の席から微かに衣擦れの音がした。
真柴くんかな、と思ったけれど、その瞬間に風が吹いたような気がした。
ほんの一瞬。
暗闇に紛れて届いたのは、真柴くんの柔軟剤の匂いでも、結愛ちゃんの香水でもない。
私がずっと探していた、あの懐かしいシトラスの香り。
​『満天の星空の下、言葉を交わすことはできないけれど。
暗闇が教えてくれる、確かな存在感。
PV400を目前に、物語は一番静かな、でも一番熱い夜明けを待っている。』