シトラスの魔法が解けるまで

「……なぁ、藤井」
不意に、隣に立っていた真柴くんが顔を寄せてきた。
電車の揺れに合わせて、彼の声が耳元で小さく響く。
​「あいつ、そんなに瀬戸がいいのかね」
​その言葉に、心臓が跳ねた。
「え……?」
「いや、あんなに無視されて、フォローも外されてんのに。10分しかない水族館に一人で突っ込んでいくなんて、俺には理解不能だわ」
​真柴くんは少し呆れたように、でもどこか真剣な目で結愛ちゃんの後ろ姿を見つめていた。
「……瀬戸のどこがいいんだか。ぶっきらぼうだし、愛想ないし」
「……それは、そうだけど」
「だろ? ……でも、莉奈もあんな感じだしな」