シトラスの魔法が解けるまで

​「……あと5分。おい藤井、里紗、先に出口行こうぜ。あいつが来なかったら、俺が引っ張ってでも連れてくるから」
真柴くんの言葉に頷き、私たちはショップを飛び出した。
出口で時計の針を凝視する。
4分、3分、2分……。
「いた! 北口さん!!」
里紗が叫んだ。
​展示エリアから息を切らして走ってきた結愛ちゃんは、満足げにスマホを握りしめていた。
「……間に合ったでしょ。さあ、行くわよ」
何事もなかったかのように歩き出す彼女。
私たちは顔を見合わせ、猛ダッシュで路面電車の電停へと駆け込んだ。
​『10分間の水族館。魚の記憶なんてまったくない。
けれど、暗闇の中へ消えていった彼女の執念と、それを冷ややかに、でもどこか焦りながら待っていた私たちの温度差。
PV350。
物語は、路面電車のガタンゴトンという音に乗って、予測不能な終着駅へと向かっていた。』