シトラスの魔法が解けるまで

​「ち、ちがうよ、つきあってないから!!」
必死に手を振って否定するけれど、顔の熱はどんどん上がっていく。
「藤井さん、めっちゃ耳赤いよ?」
隣にいた女子にクスクスと笑われ、私は両手で耳を隠した。
​真柴くんに「なんとかしてよ!」と助けを求めようとしたけれど、彼は「あはは」と笑いながら、さっさと自分の席へ向かってしまった。
(……もう、真柴くんのバカ!!)
​ふと見ると、別の会場に向かう途中の瀬戸くんの背中が遠くに見えた。
彼と同じ会場じゃなくてよかった、と心の底から安堵する。
こんなに真っ赤になっている顔、今の彼にだけは見せられない。
​『誤解が誤解を呼ぶ、修学旅行の夜。
シトラスの香りは、恥ずかしさという熱に煽られて、私の胸を激しく叩いている。
真柴くんの言葉に揺れる心と、見せたくない赤色。
明日の最終日、私はどんな顔をして瀬戸くんの前に立てばいいんだろう。』