無くしもの、探します。ご依頼は〝ウラ生徒会〟まで

 私立探杜(みもり)中学校には、無くしたものを探してくれる組織、通称「ウラ生徒会」がある。
 生徒会室の隣の倉庫室が拠点で告解室のような造りだから誰もウラ生徒会のメンバーの素性を知らない。彼らの仕事は、校内で無くしたものを探し出すのが専門。ただ見つけるだけではなく、いじめの問題や、恋愛事情、学校の七不思議のひとつを解決したりと多岐に渡るが、ひとつの共通点があった。それは〝オカルト〟に特化しているということ。
 中学2年3組のクラスの女子が「ウラ生徒会」について噂している話が耳に入った主人公、久我(くが)結城(ゆうき)は幽霊や妖怪が〝視える〟体質。幽霊を見るのも、彼等から発せられる未練のイメージを勝手に汲み取ってしまうのも好きではない。(※性格:臆病だが誰かの悲しみに寄り添える優しさを持っている。)
 
 その日の放課後、教室の掃除道具の裏側に気配を感じて覗き込むと、きらりと光るものを見つける。ウラ生徒会について噂話をしていた女子生徒が彼氏に貰った髪飾りだとイメージで伝わった。拾おうとしたが、髪飾りを隠した原因の付喪神がそれを離さない。結城は付喪神と交渉し、髪飾りの代わりに自分のハンカチを渡して交換。女生徒の机の中に入れておいてあげようと振り向いたら、クラスメイトの黒川(くろかわ)(けい)が。(※性格:頼まれたことは何があっても最後までやりぬく真面目さがある。)
 普段は無口で表情筋が動いているところを見たことがないぐらいクールな彼がスマホを片手に目をキラキラと輝かせている。自分と同じく付喪神が見えるやつと出会ったのは初めてだと感動したらしい。髪飾りを探してほしいという依頼を受けていたことを話され、それを結城が解決したことで慧がウラ生徒会へスカウト。問答無用で加入することに。

 慧は幽霊が見えるくせに幽霊探知アプリというのを自作するぐらいのオカルトヲタク。(※結城をスカウトした時にスマホを持っていたのはアプリの精度を確かめるためだった。)普段は無口でクールなのに、放課後になると生き生きとする慧に面食らう結城。「幽霊の意図がイメージとして頭の中に入ってくる」という結城の特殊能力に興味を持った慧は結城のバディになり、普段からも二人で行動するようになる。
 
 ウラ生徒会は1~3年合わせて5人のチームで構成。皆の霊感に差はあれど、無くしたものを探すことで学園生活の平穏を守るというウラ生徒会のモットーの元、集まった。ウラ生徒会には3つの掟があった。「①成績を落とさないこと②素性を知られてはいけないこと③見つけたものは必ず本人に手渡す」②に関しては(なぜか)シュールなお面や被り物をして依頼主と対面する。
 
 嫌でも幽霊と対峙しなければならないので結城はあまり乗り気ではなかったが、慧とバディを組んでほぼ無理やりウラ生徒会の活動をしていくうちに、ある噂が学校中にまことしやかに囁かれ始めた。それは「図書室の呪い」貸し出された本が戻らない現象が起きている。図書委員から「消えた本を探してくれ」という依頼を受けた結城たちはさっそく調査を始める。
 
 いつまでもウラ生徒会の活動に乗り気にならない結城に、ワケを訊ねる慧。これまで誰にも話したことはなかったが、幽霊が見える慧なら理解してくれるかもと、トラウマを話す。中学一年生の時、ある女子生徒に憑いている父親の霊が「猫の餌やり忘れてるぞ」とイメージを通して訴えかけているのがわかり、良かれと思って女子生徒に忠告したところ「私の家覗いてたの? 気持ち悪い」と言われ瞬く間に悪い噂が出回ったことが原因で公立中学校から私立へ転校してきた。それが原因で、人と話すことが怖いとこぼした結城。だから同じ力を持っている慧が友達でいてくれることがちょっと嬉しい。照れくさくも、結城の親友として味方でいることを誓う慧。
 
 消えた本の謎はすぐにわかった。男子生徒の幽霊で、最近亡くなった。恋人が好きな本だけを選んで持ち出していた。女子は転校、男子は事故で死に、もう二度と会えない状況が走馬灯のように結城の頭の中を駆け巡った。未練が残り、恋人の好きな本を読むことで寂しさを埋めているように見えた。未練が残っているのは仕方ないことだとはいえ、無理やり成仏させることは難しいと静観していたが、そのうち図書室の本がどんどん消えていくようになる。このままではまずい。
 
 結城たちは最初、彼女の好きだった本を手当たり次第に探しているものだと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。彼の目的は本ではなく、どうやら〝栞〟のようだった。そのことに気が付いた結城と慧。彼女なら何か知っているかもしれないと、それとなく死んだ生徒のクラスへ行って情報を集め、彼女と接触を図る。
 
 慧はオカルト的な好奇心で、彼や彼女の内情を読み取れないのかと無自覚に結城の能力を使ってプライベートに踏み込ませようとし、過去のトラウマが蘇り足が竦む結城。意を決して図書室の呪いの事情を話すも、「誰にも言ったことないのに」と青ざめた彼女の姿を見て、過去の転校騒動がフラッシュバックする。慧が「こいつは覗き魔じゃない」と、結城の能力を使わせようとした反省心から、結城の前に立って庇う。事情も聞き、彼女は口を開いた。転校する前に彼女が宝探しゲーム感覚でメッセージ(※「卒業式の日、桜の下で会おうね」)を書いた栞を本に挟んだから探して、と言って別れた。物理的な距離ができても私に会いに来てほしいという恋の駆け引きだった。でも彼は栞を探す前に旅立ってしまったので、未だに探しているのだろうと言う。事故で死んだことを知った彼女がひっそりと回収していたその栞を預かる。「もし彼が見えているのなら、私の代わりにこれを渡してほしい。桜の木の下で、私はずっと待ってるから、と」その言葉が結城の心を軽くした。自分の霊感を必要としてくれた。必ず届けると誓い、図書室へ。
 
 彼が好きだった本に栞を挟むことに。良かれと思って声を掛けたことで傷付いた過去を払拭するように、男子生徒へ声を掛けた。「君の探し物、預かってきたよ」結城が本を開き、栞を直接手渡す。脳内に、この栞に対して想っていた彼の感情が、感謝の気持ちと共にイメージとして流れ込んでくる。彼女からの伝言をイメージにして渡す。光に包まれた彼は天に向かって霧散した。結城と慧は桜の木まで走って行く。緑の葉が見え始めている桜の木の下で、一人佇み空を見上げる彼女を、栞を胸に抱きながら柔らかな笑顔で見つめる彼がいた。翌日、消えた本は綺麗に図書室に返却されていた。
 
 結城の中で「霊感は人を不快にさせるものではない、届かない想いを繋ぐためにあるんだ」ということに気が付いた。だから探し物を見つけることができるのだ。慧という理解者がいたからこそ、トラウマから一歩踏み出せたのだと思う。慧に感謝する結城の破顔一笑に、一緒になって笑う慧。(※お互いが名前呼びに)
笑い合う二人をチームメンバーが呆然と見つめていた。「あいつらって、声出して笑うんだな」「とくに黒川な」「幽霊にしか心を開かないんだと思ってたのに……」「結城くん、何者?」二人を見守っていた倉庫室の扉がノックされる。
 ウラ生徒会への依頼はこれからも続く。