人質令嬢、第二王子と国家反逆を狙う

 ……?

 なにか、不思議な香りがした。

 先程までの花の香りとは違う、香を焚いたような重たい香り……?

 でもモルドレッド殿下は何もおっしゃらないし、気のせいなのかもしれない。

 殿下とともに、国王陛下の前で頭を下げた。


「よいよい、たまたま別件でこの部屋が都合良かっただけだから、かしこまった挨拶などせず、本題に入ろう」


 モルドレッド殿下が顔を上げるのに倣い、私もそっと顔を上げた。


 ……が、違和感があった。

 国王陛下はいつもの玉座に腰をおろしていらっしゃる。けれど、その斜め後ろには、ぴたりと寄り添うようにアーサー殿下が立っておられた。

 ずいぶん近くにいらっしゃる……?

 側近でもあそこまで寄り添わないというくらい近くで微笑んでいるのに、国王陛下は気にした様子もなく、そのまま話を続けられた。


「先日の地方視察についてだが、問題なかろう。各地の領主に事前に通達を済ませた後、出立するが良い」

「はは、そのように」

「また、ジェニファー嬢も同行すると良い。ヴォーティガン卿も久方ぶりに娘の顔を見たいであろう」

「国王陛下の温情に感謝申し上げます」

「よいよい、君のことは第二王妃が娘のようにかわいがっている。つまり、私にとっても娘のようなものだからな」


 ちらりと斜め前に立つモルドレッド殿下を見たけれど、後ろ姿ではどんな表情をなさっているのかわからなかった。

 その向こうにいらっしゃる国王陛下へ視線を向け、さらにその後ろに立つアーサー殿下を見た。

 アーサー殿下はやはり穏やかな表情を浮かべていたけれど、じっと国王陛下を見つめたまま微動だにしなかった。

 こちらへ視線を向けることすらなかった。


 その後、日程や雨期についての注意を聞き、私たちは謁見の間をあとにした。


「よかった、案が通って。……ジニー、どうした?」

「あ、いえ……」