目が覚めると、柔らかい布団に包まれていた。
「ここは……っ、ジニー!?」
飛び起きようとしたけど、視界がぐるぐる回り、俺――モルドレッド・ドレイクは再び布団へ倒れこんでしまう。
それでも何とか起き上がろうとしたら、くつくつと低い笑い声がした。
「顔色が多少マシになったようだ」
「へ……、ヴォーティガン卿っ、失礼いたしました!」
「かまわん、王都から休みなしで馬で駆けてきたのだろう。それも一週間近くも。熱の一つや二つ、出て当然だ」
そう言われて初めて、体がずしりと重いことに気付いた。
先ほどは持ち上がった手も今は上がらず、柔らかいはずの布団が鉛のように重く感じる。
重いのは、手や体だけじゃない。
頭も喉も焼けるように熱く、何もかもが重くて苦しい。
目頭が熱くてたまらないのに、それをぬぐうことすらできなかった。
「……娘さんを、巻き込んでしまい、本当に申し訳ございませんでした」
やっとの思いで言葉を絞り出すと、ヴォーティガン卿はなぜか面白そうに、くつくつと笑いを漏らした。
「かまわんさ。元から幽閉の身だ。それに君の反逆をたきつけたのもアレだからな。まったく……元から血の気の多い娘だったが、王宮で少しは淑やかになるかと期待したのに、ますます血気盛んになってしまって」
ヴォーティガン卿は窓の外へ目を向けたまま、静かに言った。
横になったままの俺には、卿に何が見えているのかわからない。
……たとえ起き上がれても、同じものはきっと見えないのだろうけど。
「まあ、それはそれとして、アーサー殿下への反逆は君が始めたことなんだから、君がきちんと終わらせなさい」
「はい、卿。俺の手で、必ず」
「よろしい。まあ、もう少し寝ているといい。熱が下がったら作戦会議と行こうか。君の母上からも、お怒りの手紙をいただいているからね」
ヴォーティガン卿が苦笑した。
そういえばジニーが卿宛に母から手紙を預かっていると言っていた。
なんでも「辺境伯同士でしか読み取れない暗号を用いた手紙」だとか。
そんなものまで用意されていたことには引っかかるものがあったけど、今はそれについて考える元気もなかった。
「あの、母はなんて?」
「知りたければ、早く元気になることだ。ちなみに娘は昨日のうちに復活して、今日は我が家の兵たちと訓練に励んでいるよ。我が兵を盛大に“鼓舞”しながらね」
「俺は、どれだけ寝ていたんですか?」
「今日で三日目だね」
「三日も……!?」
「しかしまだ熱は下がらない。私はジニーに君が起きたことを伝えてくるから、まだ寝ていなさい」
「でも」
ヴォーティガン卿は立ち上がって肩をすくめた。
「今は休む時だ。君の母上には私のほうから早馬を飛ばしておく。なあに、彼女も防人の一族だ。そう簡単には折れないさ」
そう言って、卿は振り返らずに出て行った。
入れ替わるように侍女が寄ってきて、濡らした布で体を拭いてくれる。
水だけ飲ませてもらって、また横になった。
三日も眠っていたはずなのに、まぶたは鉛みたいに重く、まだ眠気が抜けない。
一週間近く投獄され、そのあとさらに一週間近く馬で走り続けたのだから、当然といえば当然なのだろうけど。
考えたいことがたくさんあった。
確認したいこともたくさんあった。
王宮は、離宮は、貴族たちは、母は……そしてジニーは、今どうしているのだろう。
彼女の顔を見たくて仕方なかったのに、結局、俺の熱が下がるまでジニーは一度も姿を見せなかった。
「ここは……っ、ジニー!?」
飛び起きようとしたけど、視界がぐるぐる回り、俺――モルドレッド・ドレイクは再び布団へ倒れこんでしまう。
それでも何とか起き上がろうとしたら、くつくつと低い笑い声がした。
「顔色が多少マシになったようだ」
「へ……、ヴォーティガン卿っ、失礼いたしました!」
「かまわん、王都から休みなしで馬で駆けてきたのだろう。それも一週間近くも。熱の一つや二つ、出て当然だ」
そう言われて初めて、体がずしりと重いことに気付いた。
先ほどは持ち上がった手も今は上がらず、柔らかいはずの布団が鉛のように重く感じる。
重いのは、手や体だけじゃない。
頭も喉も焼けるように熱く、何もかもが重くて苦しい。
目頭が熱くてたまらないのに、それをぬぐうことすらできなかった。
「……娘さんを、巻き込んでしまい、本当に申し訳ございませんでした」
やっとの思いで言葉を絞り出すと、ヴォーティガン卿はなぜか面白そうに、くつくつと笑いを漏らした。
「かまわんさ。元から幽閉の身だ。それに君の反逆をたきつけたのもアレだからな。まったく……元から血の気の多い娘だったが、王宮で少しは淑やかになるかと期待したのに、ますます血気盛んになってしまって」
ヴォーティガン卿は窓の外へ目を向けたまま、静かに言った。
横になったままの俺には、卿に何が見えているのかわからない。
……たとえ起き上がれても、同じものはきっと見えないのだろうけど。
「まあ、それはそれとして、アーサー殿下への反逆は君が始めたことなんだから、君がきちんと終わらせなさい」
「はい、卿。俺の手で、必ず」
「よろしい。まあ、もう少し寝ているといい。熱が下がったら作戦会議と行こうか。君の母上からも、お怒りの手紙をいただいているからね」
ヴォーティガン卿が苦笑した。
そういえばジニーが卿宛に母から手紙を預かっていると言っていた。
なんでも「辺境伯同士でしか読み取れない暗号を用いた手紙」だとか。
そんなものまで用意されていたことには引っかかるものがあったけど、今はそれについて考える元気もなかった。
「あの、母はなんて?」
「知りたければ、早く元気になることだ。ちなみに娘は昨日のうちに復活して、今日は我が家の兵たちと訓練に励んでいるよ。我が兵を盛大に“鼓舞”しながらね」
「俺は、どれだけ寝ていたんですか?」
「今日で三日目だね」
「三日も……!?」
「しかしまだ熱は下がらない。私はジニーに君が起きたことを伝えてくるから、まだ寝ていなさい」
「でも」
ヴォーティガン卿は立ち上がって肩をすくめた。
「今は休む時だ。君の母上には私のほうから早馬を飛ばしておく。なあに、彼女も防人の一族だ。そう簡単には折れないさ」
そう言って、卿は振り返らずに出て行った。
入れ替わるように侍女が寄ってきて、濡らした布で体を拭いてくれる。
水だけ飲ませてもらって、また横になった。
三日も眠っていたはずなのに、まぶたは鉛みたいに重く、まだ眠気が抜けない。
一週間近く投獄され、そのあとさらに一週間近く馬で走り続けたのだから、当然といえば当然なのだろうけど。
考えたいことがたくさんあった。
確認したいこともたくさんあった。
王宮は、離宮は、貴族たちは、母は……そしてジニーは、今どうしているのだろう。
彼女の顔を見たくて仕方なかったのに、結局、俺の熱が下がるまでジニーは一度も姿を見せなかった。



