人質令嬢、第二王子と国家反逆を狙う

 数日後、国王陛下より、モルドレッド殿下と共に呼び出された。


 先日提出した地方視察の経路についてのお話だそうだ。

 殿下が朝の鍛錬を終えたあと、私たちは並んで王宮へと向かった。汗をかいたからと湯浴みまでなさった殿下からは、清潔な石鹸の香りがふわりと漂っている。


「君に汗臭いと思われなくないからね」


 そうおっしゃるけれど、私はそんなこと気にしない。

 午前中の王宮は、出勤してきた貴族や清掃中のメイド、慌ただしく行き交う政務官たちで賑わっていた。

 開いた窓からは、庭園に咲き誇る花々の甘い香りが流れ込んできていた。

 私は殿下と並んで、通りすがる人々と挨拶を交わしながら謁見の間に向かう。


「基本的には例年と同じ内容だから、大丈夫だよ。前回は数年前に叔父上が奥方やお子たちと一緒に、家族旅行がてら行っているね」

「そこまで形式張ったものでもないのですね」

「うん。地方のこともちゃんと見ていますって示すためのものだからさ。基本的にはその土地を治める貴族に任せているけど、見捨てているわけでも、完全に放任しているわけでもない。これからも友好的にやっていきましょうっていう意味合いだね。社交シーズンだから、王族が戻るときに一緒に王都へ向かう貴族もいるくらいだし」

「なるほど、王族に同伴することで忠誠を示すのですね」

「そういうこと」


 殿下が笑って頷いたところで、謁見の間の扉の前についた。


「モルドレッド・ドレイク、参上致しました」

「ジェニファー・ヴォーティガン、同じく参上致しました」

「入ってまいれ」


 ウーサー王の声に従い、扉が静かに開かれた。