作戦会議といっても、モルドレッド殿下がおっしゃっていたとおり、まずは何が起きたのか把握しないといけない。
そういうわけで、第二王妃殿下は正妃殿下へ話を聞きにいくとおっしゃった。
「使いを出しますけど、すぐにご対応いただけるかはわからないわ。もうすぐ妃殿下主催の社交パーティーですから」
そういえば、もうそんな時期だった。
けれど、結果から言えばそれは杞憂に終わった。社交パーティー自体が延期になったからだ。
***
「『第二王子が他国と通じていたというのに、王家が社交パーティーなど開いている場合ではない』ですって」
正妃殿下からの返事を読んだ第二王妃殿下は、呆れたように肩をすくめた。
それはそうだ。
手紙の続きには、向こうでも事態の把握を急いでいるため、しばし待つようにと書かれていた。
私も父へ文を送ったけれど、なにしろ領地は遠い。無事に届いているかどうかもわからなかった。
最悪の場合、王都を出る際にアーサー殿下の兵へ捕縛されている可能性だってある。もっとも、モルドレッド殿下配下の諜報部隊へ頼んだので、そんなへまはしていないはずだけれど。
殿下が連れていかれてから、まだ二、三日しか経っていない。
それでも私と第二王妃殿下は、一日千秋の思いで情報を待ち続けていた。
窓の外では、日が沈むのがやけに早くなった気がするし、朝日だっていつまで待っても昇ってこない。
そんなはずはないのに、そう感じてしまうくらい、離宮は重く暗い空気に包まれていた。
そんな重苦しい空気の中、正妃殿下から便りが届いた。
私と第二王妃殿下は、執務室のソファを挟んで向かい合った。
「……なるほど」
先に読まれた第二王妃殿下が眉間にしわを寄せた。
第二王妃殿下は手紙を三度読み返してから私へ差し出し、そのまま侍女を呼んだ。
ブランデーをたっぷり入れた紅茶を頼まれて、思わず深く息を吐いた。
私も受け取った手紙に目を通す。
「……さようですか」
モルドレッド殿下は、連れていかれたときに告げられた通り、国家反逆罪で王宮の地下へ幽閉されているそうだ。
そして国家反逆の罪を着せられた理由は、ゲルソンと密通していたとされたから。
隣国のゲルソンとは、私が生まれる前までは戦争が続いていたけれど、ここ最近は小康状態が保たれている。今は国同士の関係こそ微妙なままだけれど、商人たちの行き来は活発で、モルドレッド殿下も最近は港へ視察に行かれていた。
その視察自体が罠だったようで、ゲルソンの有力者と密会していた、あるいは文を交わしていた、という話にされているらしい。
その証拠として出されたのが、アーサー殿下がお持ちだった手紙だ。けれど、それが偽物だと証明するすべがない。
私や第二王妃殿下が確認すれば、筆跡の違いくらいすぐにわかるだろうけれど、
「罪人の身内の者に、証拠品を消失させられてはいけない」
といって渡してくれないだろう。
たとえ紛失しなかったとしても、「すり替えた」「手を加えた」と濡れ衣を着せられ、私たちまで捕まりかねない。
三度読み終えて顔を上げると、第二王妃殿下は紅茶のブランデー割り――というより、ほとんどブランデーの紅茶割りを飲み干したところだった。
「どうご覧になります?」
私が言うと、第二王妃殿下は眉間にしわを寄せた。
「どうもこうもありません。そもそも、港への視察はアーサー殿下からの指示だというのに。おそらく、ジニーを同行させないよう手を回したのもアーサー殿下でしょうね」
首をかしげると、第二王妃殿下は深く息を吐いた。
「あなたまで罪人にでっちあげたりしたら、ヴォーティガン卿が黙っていませんよ。ただでさえ、ここ最近のアーサー殿下の暴挙で、こちらの派閥の貴族たちはぴりぴりしているというのに」
父が私の軟禁を許しているのは、私が第二王妃殿下に本当によくしていただいているからだ。
それが地下牢で監禁となると、たしかに挙兵しかねない。
一瞬、それでも構わないような気持ちになったけれど、それで王都を戦乱に巻き込むのは、防人としてあまりにも無責任だ。
そういうわけで、第二王妃殿下は正妃殿下へ話を聞きにいくとおっしゃった。
「使いを出しますけど、すぐにご対応いただけるかはわからないわ。もうすぐ妃殿下主催の社交パーティーですから」
そういえば、もうそんな時期だった。
けれど、結果から言えばそれは杞憂に終わった。社交パーティー自体が延期になったからだ。
***
「『第二王子が他国と通じていたというのに、王家が社交パーティーなど開いている場合ではない』ですって」
正妃殿下からの返事を読んだ第二王妃殿下は、呆れたように肩をすくめた。
それはそうだ。
手紙の続きには、向こうでも事態の把握を急いでいるため、しばし待つようにと書かれていた。
私も父へ文を送ったけれど、なにしろ領地は遠い。無事に届いているかどうかもわからなかった。
最悪の場合、王都を出る際にアーサー殿下の兵へ捕縛されている可能性だってある。もっとも、モルドレッド殿下配下の諜報部隊へ頼んだので、そんなへまはしていないはずだけれど。
殿下が連れていかれてから、まだ二、三日しか経っていない。
それでも私と第二王妃殿下は、一日千秋の思いで情報を待ち続けていた。
窓の外では、日が沈むのがやけに早くなった気がするし、朝日だっていつまで待っても昇ってこない。
そんなはずはないのに、そう感じてしまうくらい、離宮は重く暗い空気に包まれていた。
そんな重苦しい空気の中、正妃殿下から便りが届いた。
私と第二王妃殿下は、執務室のソファを挟んで向かい合った。
「……なるほど」
先に読まれた第二王妃殿下が眉間にしわを寄せた。
第二王妃殿下は手紙を三度読み返してから私へ差し出し、そのまま侍女を呼んだ。
ブランデーをたっぷり入れた紅茶を頼まれて、思わず深く息を吐いた。
私も受け取った手紙に目を通す。
「……さようですか」
モルドレッド殿下は、連れていかれたときに告げられた通り、国家反逆罪で王宮の地下へ幽閉されているそうだ。
そして国家反逆の罪を着せられた理由は、ゲルソンと密通していたとされたから。
隣国のゲルソンとは、私が生まれる前までは戦争が続いていたけれど、ここ最近は小康状態が保たれている。今は国同士の関係こそ微妙なままだけれど、商人たちの行き来は活発で、モルドレッド殿下も最近は港へ視察に行かれていた。
その視察自体が罠だったようで、ゲルソンの有力者と密会していた、あるいは文を交わしていた、という話にされているらしい。
その証拠として出されたのが、アーサー殿下がお持ちだった手紙だ。けれど、それが偽物だと証明するすべがない。
私や第二王妃殿下が確認すれば、筆跡の違いくらいすぐにわかるだろうけれど、
「罪人の身内の者に、証拠品を消失させられてはいけない」
といって渡してくれないだろう。
たとえ紛失しなかったとしても、「すり替えた」「手を加えた」と濡れ衣を着せられ、私たちまで捕まりかねない。
三度読み終えて顔を上げると、第二王妃殿下は紅茶のブランデー割り――というより、ほとんどブランデーの紅茶割りを飲み干したところだった。
「どうご覧になります?」
私が言うと、第二王妃殿下は眉間にしわを寄せた。
「どうもこうもありません。そもそも、港への視察はアーサー殿下からの指示だというのに。おそらく、ジニーを同行させないよう手を回したのもアーサー殿下でしょうね」
首をかしげると、第二王妃殿下は深く息を吐いた。
「あなたまで罪人にでっちあげたりしたら、ヴォーティガン卿が黙っていませんよ。ただでさえ、ここ最近のアーサー殿下の暴挙で、こちらの派閥の貴族たちはぴりぴりしているというのに」
父が私の軟禁を許しているのは、私が第二王妃殿下に本当によくしていただいているからだ。
それが地下牢で監禁となると、たしかに挙兵しかねない。
一瞬、それでも構わないような気持ちになったけれど、それで王都を戦乱に巻き込むのは、防人としてあまりにも無責任だ。



